クマ外傷で顔面損傷9割、心の不調8割 深刻な後遺症抱える 秋田大救命センター23年度調査(Web東奥)
秋田大学医学部付属病院高度救命救急センター(秋田市)の中永士師明(なかえ・はじめ)センター長は、クマに襲われて同センターを受診した重度の外傷患者の状態を調査・研究している。2023年度の受診者20人のうち、約9割が顔面を損傷し、約8割が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症している可能性があるという。中永センター長は「クマによる外傷は、命に別状はなくても心身や生活に大きな影響を及ぼす。青森県を含め全国でクマの目撃や人身被害が増えている中、身近な危機として認識すべきだ」と強調する。 秋田県では23年度、70件のクマの人身被害が発生。同センターでは20人の重症患者の治療に当たった。 受診者の中には、顎や鼻の骨が折れたり、顔が引き裂かれて眼球が飛び出たりした事例があった。クマが立った体勢から前足で人を殴打し、その後にかみついたとみられる事例が目立つという。 「報道で『命に別条はない』とされると、軽傷の印象を受けることもあるが、実際は凄惨(せいさん)で、高所からの転落や車両にひかれた事故と同等に深刻なケースもある」と中永センター長は語る。 被害に遭った時期は、冬眠に備えクマの活動が活発化する10月が多かった。被害者は高齢の男性の割合が高く、場所は山林よりも住宅地や市街地が多かった。 救命処置・治療を受けた後も視力や咀嚼(そしゃく)機能に不調が生じるなど、後遺症が多く確認された。8割に「当時を思い出して眠れない」「突然涙が出る」など、PTSDとみられる症状が確認されているという。 被害を防ぐ方策として中永センター長は「一番の対策は、クマが出没する場所に近づかないこと」と強調。「もし山林や畑などに入る時にはヘルメットを着用したり、クマ撃退用スプレーを携帯したりするのが理想」と助言する。 万が一、襲われた場合には、「うつぶせになって顔を隠し、手で首を覆って守ると致命的な傷を負う可能性は低くなる。ツキノワグマは食べる目的で人を襲うことは少なく、人が危害を加えないと分かったら立ち去ることが多い」と説明した。 また、命は助かったものの、攻撃によって鼻や耳などが取れた場合には「その部位を病院に持って来てほしい。医療は進歩しているので、外科手術で対応できることもある」と語った。 <なかえ・はじめ 1989年、奈良県立医科大学卒業。大阪大学医学部付属病院、米セントルイス大学麻酔科、豪プリンスオブウェールズ病院などでの勤務を経て、2015年から秋田大学救急・集中治療医学講座教授、21年から同大付属病院高度救命救急センター長兼任。著書に「クマ外傷 クマージェンシー・メディシン」など>
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